早朝、まずは本宮を通り過ぎ貴船川沿いにせせらぎを聞きながら上がっていきます。中宮(結社ゆいのやしろ)・奥宮を目指します。300mほどで「結社」に到着。
結社(ゆいのやしろ)は、磐長姫命(いわながひめみこと)を祀っています。古来より、縁結びの神として信仰を集めていると書かれています。これには、疑問があります。
磐長姫命は大山祇神(おおやまつみ)の娘で、木花開耶姫(このはなさくやひめ)の姉。
コノハナノサクヤビメとともに天孫瓊々杵尊(ににぎ)の元に嫁ぐが、イワナガヒメは醜かったことから父の元に送り返された姫です。縁結びとはほど遠いですからね。
社殿の右わきには「天の磐船」とよばれる自然石があります。朝の静けさと気温の低さもあって、凛とした空気が心地よいです。和泉式部が参拝した時の和歌が石碑として置かれています。
「ものおもへば 沢の蛍も わが身より あくがれいづる 魂かとぞみる」
:::恋に悩んでいたら、沢に飛ぶ蛍も私の体から抜け出した魂ではないかと見えます:::
それに対して貴船明神が返したと伝えられる短歌があります。
「おく山に たぎりて落つる 滝つ瀬の 玉ちるばかり ものな思ひそ」
:::奥山にたぎり落ちる滝の水玉が飛び散るように、(魂が飛び散ってしまうほど)思い悩んではいけません:::
いずれも、後拾遺和歌集に収録されています。
さて、さらに400m先に奥宮があります。
鳥居を抜け暫く大きな杉並木の参道を歩きます。
奥宮到着。まだ、灯篭に灯りが入っています。以前はこちらが本宮だったようです。
ご祭神は、闇龗神(くらおかみのかみ)。本宮の高龗神と同じ神であるとされています。
静謐な境内を一人歩いてゆきます。
本殿の脇に「権地」がありました。「権地」とは、社殿の新築・改築・遷座などで社殿の工事を行う際に、仮の社殿を建てる場所のことをいうそうです。そして、この下には「竜穴」があると伝えられています。
文久年間(1861~63年)、本殿工事の際に大工が誤ってノミを本殿下の竜穴に落としたところ、にわかに天候が変わって突風が起こり、ノミを空中へ吹き上げ、怒った竜が現れ、その大工は落命したという話もあります。そんな伝説も遺されているほど、「穢したりしてはいけない神聖な場所」だと考えられていたのでしょう。
暫く、誰もいない境内で、山の空気を吸い込み、静かに過ごしました。
貴船川を下り、本宮まで戻ります。
ご祭神は、先ほど記述しましたが、水の神様である「高龗神(たかおかみ)」です。
全国に約450社ある貴船神社の総本社。式内社(名神大社)にして二十二社(下八社)の一社。旧社格は官幣中社です。
参道に階段には、両脇に朱の灯篭が続きます。この写真が撮りたかった!!
拝殿には、灯りがつけられています。
本殿は、三間社流造です。
神紋は「双葉葵」紋。
境内には、白馬・黒馬の神馬像があります。当社は水の神を祀る神社ですが、祈雨八十五座の一として、祈雨に黒馬、祈晴に白馬を奉納されたそうです。昔は馬が貴重だったので、いつしか馬の絵を奉納するようになったらしく、そもそも絵馬発祥の地だといわれています。
京都の奥座敷「貴船」の静けさと「貴船神社」の神気を十分に堪能しました。